4月某日、電車でイポーへ。
イポーはスズの生産によって発展、中華系の億万長者たちが誕生したマレーシア第3の都市。
クアラルンプールから約200km北に位置する。
今回はクアラルンプール駅から、マレー鉄道(KTM)でイポー駅へ向かう。
日本にいた時からほぼ毎シーズン青春18きっぷを買うほど電車が好きだった私にとって、海外での鉄道長距離旅は念願。もはや当初はイポーに行くことよりも鉄道が目的だった。
約2時間半かけて終点のイポーへ。停車駅はそこそこあったので日本でいう快速とか準特のような感じだろうか。
全席指定の車両はかなり新しく清潔で快適。テタレを飲みながら読書に耽る。電車の中でする読書が一番好き。
イポー駅に到着。真っ白な外壁とオレンジ色の屋根が存在感を放つ素敵な駅。
KLでの豪雨が嘘のように晴れ、幸先が良い。
今回事前に手配したのは鉄道のチケットと手頃なビジホのみ。あとは2日間ひたすら街歩きを楽しんだ。
川を挟んで西側(駅側)が旧市街、東側が新市街と分かれているらしいが、正直あまり気にせずに街を歩いていたのでよく境目がわかっていない・・・(笑)。歴史ある洋館(もはや古すぎて廃墟みたいなのもある)や遊び心あふれる色とりどりの建物が並び、ずっと絵になる風景が続いている。とても散歩しがいのある場所。
イポーは「マレーシア第3の都市」と言えども、人口は約71万人と日本の中核地方都市くらいの規模。人はそこまで多くなく、のんびりと観光できる。ちょこちょこと小洒落たカフェやレストラン、レコ屋、楽器屋、古着屋があったりして、あてもなくブラブラしていると何かに辿り着く。
こっちに来て知り合った日本人のおじさんが、「マレーシアは僕らが子供の頃、昭和の日本的な雰囲気を感じる」と言っていた。KLで過ごしていると感じにくいが、イポーに来るとそれがよくわかる。チェーンよりも個人商店&家族経営が目立ち、前近代的でどこか懐かしい雰囲気が漂っている。
そして日本の地方都市といえば・・・みたいなデパートがなんと、ここイポーにも存在する。
このワゴンに平積みされた子供服、知らんプライベートブランドの嵐、角にひっそりとある玩具屋さん・・・既視感すごい。地方の駅近デパートあるあるって世界共通? 感動した。
普段家の近くのスーパーでよく見る日本の食品も、ここイポーのデパートにはほとんどない。
駐在員さんもあまり住んでいないエリアなのだろう。真のローカルスーパー感があって面白かった。
そんなイポーで2日間過ごして、特に良かった場所をリストアップ。
美味しかった① 明閣
イポー出身だという夫の同僚のススメで利用した点心のお店で、イポーに到着して最初に行った場所。
入店して席に着くやいなや、店員さん2、3人がお盆にいっぱいの料理を抱えてこちらにやってきて中国語で何か話しかけてきた。なんだ?これは韓国料理行った時のキムチみたいな、お通しみたいなやつ? と思っていたら注文した後も頼んでいない料理を次々と持ってくる。どういうこと?と大混乱・・・
後半やっと店のシステムを理解し始め、それがお通しではなかったとわかった。例えば私がシュウマイを頼んだら他の卓にも「今からシュウマイ作るけど、君らも食う?」と事前に聞いてまとめて作る、または出来上がってから「シュウマイ作ったんだけどいる?」といった感じで、注文を待たずにできたものからとりあえずどんどん提供していくスタイルのようだ。確かに点心て一遍に作りたいもんね。そして全部熱々で嬉しい。合理的だ。ただ、今お会計いくらよ?という状態が最初から最後まで続いたのは不安だった(結果超安かったのでヨシ)。
システムの理解に時間がかかった理由としては、英語が通じなかったことが大きい。そして、マレーシアに英語が通じない場所があるということをここに来るまで完全に忘れていた。この店に限らず、イポーでは、あ、私たち完全に中国人だと思われているな、という瞬間が結構ある。「謝謝!」とジェスチャーでなんとか切り抜けていく。
それにしても全部安くて本当に美味しい。完全にハマった私たちはメニューを全て写真に収め、完璧に予習して翌日の朝(なんと毎朝6時から営業している)行こうとしたのだがあいにくの定休日。また次回リベンジします。
美味しかった② SSF Restaurant
カリーミーとプリン。旨辛スープとおばあちゃんのプリンみたいな懐かし系の味が染み渡る。
お店の雰囲気も、スタッフさんが和気藹々としていて良い。マレー系の店あるあるだけど、お店の人がみんな楽しそうに働いているのすごく好き。賄いも、普通に客席で食べている。
美味しかった③ Ayam Garam Aun Kheng Lim
岩塩で蒸し焼きにした塩チキン、丸ごと一羽のお持ち帰り専門店(鶏そのものの写真を撮り忘れた)。
ホテルで食べたりする人が多いらしいのだが、私たちは帰り際に買ってその日の家夕ご飯に。
ご飯やビールに合うしょっぱさがたまらない。漢方?ハーブ?がふんだんに使われており、これはなるほど家では作れない味だなと思った。
丸ごと鶏を食べる機会なんて滅多にない。「砂肝って一羽からとるとこれぐらいなんだ」とか「軟骨ってこんなふうについているんだねえ」とか言いながら夫と食べ、なかなか楽しい食卓になった。
良かった場所① Fujiyama records
良い感じのレコ屋があると、嬉しくなってつい入る。
2階にあった古着コーナーの雰囲気も含め、いかにも日本っぽい店。店主か誰かが日本人なのでは?と思ったほど。宇多田ヒカルや松田聖子のポスターも貼ってあり、J-POP愛を感じた。
あと、以前自分のバンドでカバーした「best part」が流れたのも懐かしくて、良い気分になった。
良かった場所② Vintage Cafe No.100
帰りの電車まで時間潰しをしようと立ち寄ったカフェ。
店名通り、ビンテージ家具や小物がずらりと並んだ見応えのあるインテリアは見ていて本当に飽きない。店主もとっても気さくだった。
「西洋への憧れ的な感情って、日本人もマレー人も同じなんだな」と夫がポツリ。
良かった場所③ ケロットン寺院
イポーには中国系の寺院がたくさんあり、今回はその中の一つに「極楽洞(Kek Look Tong)」へ。駅周辺からGrabで20分ほどの場所にある。
写真では伝えきれないほど巨大な鍾乳洞、その中にある荘厳な仏像たちは圧巻・・・一見の価値あり。本当に来て良かった。
もし私がこの鍾乳洞の第一発見者だったら、絶対に神の存在を信じてしまう。それぐらいとても神秘的でパワーを感じられる場所だった。
それからこの鍾乳洞を通り抜けた先の公園がまたすごい。
こういうのを理想郷というのではなかろうか。
普段マレーシアで見る南国っぽい植生とは違い、どこか日本的な雰囲気を感じる広大な空間。四季はないのに、不思議ね。
のんびり散歩したりスワンボートにも乗っちゃったりなんかして、長閑な朝活時間になった。
こういう仏教寺院にもヒジャブ(ムスリム女性が顔周りを隠すストール)をつけた女性たちがいて、親子で元気にレンタサイクルを漕いでたりしてた。
思ったよりもみんな他宗教に寛容なんだな、というのがマレーシアに来てからの大きな気づきの一つだ。「〇〇教の信徒は鳥居をくぐっちゃいけないらしい」みたいな話を日本で聞いたことがあったので、異教徒の地に踏み込むのはタブーなのかなと勝手に思っていた。
イスラム教にも宗派がいろいろあるらしいので一概には言えないけれど、なんかこういう光景を見ると安心する。
夫がこの旅行の前日、会社の人にイポーに観光に行くことを伝えたら「何もないよ」と言われたそう。
確かにドーンて感じの観光地があるわけではなく、日本から来た友達に勧めるにはマニアックすぎる場所かもしれないが、「もう一度食べたい」「もう一度行きたい」という個人的なお気に入りがたくさん見つかる場所。街歩きが好きな人にはぜひ一度訪れてみてほしい。
あと、イポーは天然温泉が湧き出ることでも有名なのだそう。今度はそちらにも行ってみたいなと思っている。